やがて人間国宝級の絵師や庭師も共感して協力、現在のような形となった。この廃寺名園復活の話を聞いたとき、やはり近江人は大したものだと目の覚める想いがした。
物の価値を理解する文化的素養と、毀つことなく丁寧に保っていける勤勉さこそ、近江人の偉大さだ。近江は長閑な場所ではあるが、千年以上前から現在に至るまで、単なる鄙びた田舎であったことはない。
素晴らしいものが野山の中に点在し、素晴らしい価値観と行動様式を持った近江人たちがいるのだ。
晩年、近江に傾倒した白州正子の言葉によれば「近江は日本の歴史の舞台裏」だそうだ。近江の地は遠景も中景も近景も美しい。
古いものが廃れることなく、よくその姿を保っている。
水は清冽で、山や野良は掃き清めたように手入れされている。
寺社や古い住宅は、独特の美の基準を持っているかのように思える。