〜さざなみのおおやしま〜

何でも「少なく、小さく、軽く」が身上のミニマリスト。GAFAMの犬。楽天経済圏の住人。<サラリーマンのテーゼ>について考える。

清水川緑地の物語〜小鮒釣りし かの川を取り戻す物語〜


「小鮒釣りし 彼の川」の物語
 
かつて本町通・延命時公園・八日市駅を結ぶエリアは飲み屋・料亭・銭湯・本町通の活気あるお店があり、たくさんの人が行き来していた。
一方で延命寺公園手前の清水川でザリガニ釣りができたという。
清水川の再生を目指す「清水川湧遊会」という団体があった。
清水川の再生を目指して要望活動・住民署名活動を展開。
これを受け旧八日市が護岸整備を行う。
景観は非常に良くなった。
しかし問題が発生!!
水が流れない・・・・。
せっかく流水が河床へ浸透してしまうのだ。
「清水川」は「湧水」を水源としていた川。
地下水位が低いのだ。
水は流れることなく、わずかに湿る程度の湿地になってしまう。
やがて雑草の格好の繁茂地となる。
加えて悪臭を放つことになる。
清流復活の情熱への悲しく冷酷な結末!!
 
しかし「清水川湧遊会」の人々は挫けなかった。
追加の水源として近くの神社内の井戸に着目する。
農業用水として利用していた井戸だ。
これを水源として利用する方法を着想する。
もっとも懸念された資金面は、大手住設機器メーカーのTOTOの『水環境基金』おうみNPO活動基金「まち普請事業助成」と清水町自治会費からの拠出(「湧水会」はもともと有志の集、任意団体)にて手当てする。
作業自体は「清水川湧遊会」の人たちを中心として、手作業!!
この話を知ったときに感動した。故郷の川を復活したい、という想い。
「想い」だけではない。
「想い」を着実に形にしていく企画力と行動力。
やがて広がっていく「想い」への共感の和。かつて清流の清水川で遊んだご老人も曲がった腰で作業に参加する。
あの故郷の美しい川を取り戻すために。
大した人足にはならないのかもしれない。
でも老人は作業がしたいのだ。
地域のため、なんて高踏な理由ではなく、自分の思い出のため。
ボランティアで協力する造園業と建設業の人たち。
TOTOの若い作業員さんたち。
北九州から何度か八日市に来た壮年のTOTOの社員さん。
彼はやがて「浜ちゃん」と呼ばれるまでになる。
やはり近江の人たちは他者を、「取り込んで」しまう能力において優れている。
「取り込む」という言葉が狡猾さをイメージさせすぎるとすれば「味方につける」ことが上手いと言える。
繊細な心遣と柔らかい物腰と共存する気安さにやられた人々は多い。
あの俳聖・松尾芭蕉をして「ゆく春を近江のひとと惜しみける」いわしめた人徳ともいうべき力。
 
「清水湧遊会」を中心にいくつもの力を集めて「清水川」は蘇ることになる。
現在ではさらに整備が進み周辺は緑地公園となっている。
八日市の人々の「小鮒釣りし 彼の川」を取り戻すための物語。
壮大とは言い難いが、なんとも素晴らしい物語である。