関西に来て一番驚いたのが「私鉄」充実度。
そして京阪沿線か阪急沿線かという沿線の違いは、高槻市に住んでいるか茨木市に住んでいるか、ということより大きな違いを持つという事実。
いわば私鉄・新聞社といった民の力を背景に自治都市的な雰囲気をもっていた「民衆の大都会大阪」がいかに「帝国の一都市」へと変容していくかが描かれている。
鉄道に限らず、「都市」「大阪的なもの」に興味があるかたは是非読むベシ。
大阪の私鉄のことがよくわかる。
私鉄といっても東京と大阪ではずいぶん「思想」が異なることがわかる。
阪急(私鉄)は「梅田駅」であり、官鉄は「大阪駅」であり、地名は「梅田」である。東京の新宿であれば官鉄は「新宿駅」、各私鉄は「京王新宿駅」「小田急新宿駅」、名古屋では官鉄は「名古屋駅」、各私鉄は「新名古屋」など。
つまり関西では街の主人は「私鉄の駅」なのだ。
小林一三(阪急電鉄創始者)が
われわれから言へば、京阪神というものは鉄道省にやつて貰わなくてもよろしい。そんなことは大きなお世話です。われわれがどんなにでもして御覧に入れます
言ったことは痛快。鉄道省から天下りを受け入れない阪急・小林の思想をよくあらわす。
慶応人らしい。
表題は原さんがつけたものではなく、編集者が営業上の理由でつけたもの思われる。
ややダサいが「東京対大阪」という構図は本を売るにはうってつけ。実際この本はよく売れたし「サントリー学芸賞」もとった。
「関西の私鉄ってすごいな」と漠然と思っていたわけです。
「街場ってのは私鉄がスゴイねんな」と思っていましたが、同じく街場の関東と関西でも、また違うとのこと。
漠然とした「感想」に理論的な説明を与えてくれた書です。
僕は俗にいう「鉄オタ」ではないのでしが、「都市の装置」としての私鉄には多大な興味があるわけで、その興味を喚起・促進させてくれた一冊です。
オススメです。